農園だよりDiary

2023年9

2023.09.04
 皆さん今日は。

 毎日暑い日が続きますね。今朝のニュースでは東京で30℃以上の夏日が連続60日続き、まだ更新中との事。新潟では雨不足により田んぼの稲が枯れているというニュースも。高冷地阿蘇でも日中はまだ暑いですが朝夕は随分涼しくなりました。例年ならお盆を過ぎると涼しくなりはじめ、9月になると寝る時には窓を閉めないと寒いのですが、今でも開けていてちょうど良いくらいですから例年に比べると気温は相当高いようです。毎日の農作業では水分補給は欠かせません。朝食の味噌汁の水分、塩分に加えて保冷の箱に凍らせた保冷剤とペットボトル2本の水をいつも軽トラックの助手席に。喉が渇く前に一口。お陰で熱中症にかかることはありませんが、汗腺が発達しすぎて珠の汗です。我が家では納屋にも旧式洗濯機があり、洗剤は使わず地下水の水道を出しっぱなし、タイマー最長で稼働させ、終わったら脱水。毎日晴天なので外に干しておくとすぐに乾いてまた着られます。
 そんな暑い日が続いていますが田んぼの稲は順調に生育しています。7月末に穂が出て花が開き、稲はそれから茎や葉、根に蓄えた養分を転流させ急速に実が充実します。ピョンと上を向いていた緑の稲穂は日に日に湾曲し下を向き始めます。濃い緑だった茎や葉も日に日に淡くなります。稲穂の籾をつまんでみると初めの頃は白い液体のデンプンが出ていたのが、全身から送られてきた養分で満たされ固くなり、黄色く色づくころには茎が穂の重さに耐えられなくなり隣の株にもたれ掛り、田んぼ一面がざわついて規律を失ってしまい乱れます。稲穂が熟し田んぼ全体が黄金色になると、やがて稲刈りの時期になります。秋雨前線が南に下がったら空気も乾燥し、稲刈り開始になるのですが天候次第です。子供の頃、土日は家族総出、鎌での稲刈りでした。阿蘇では掛け干し乾燥ではなく、「いなで」(稲わらの穂の部分同士をつなぎ合わせて草束や稲束を作る結束紐)で一抱えほどに束ねた稲束を10束ほど丸く寄せて上向きに立て、その上に稲わらで屋根をかけて、ボッチを作って自然乾燥。その後「脱穀機」で脱穀と沢山の手順を経て米が出来ていたのを覚えています。田植えも、草取りも、収穫も全て人の手。両親は大変な苦労をして自分たちを育ててくれたんだなと感謝しています。昔、日本の農家は栽培面積が少なくて小規模。「こんな採算の合わない農業はやめてしまえ」と言われていましたが、小規模だったのは当然だったのですね。今でも時々、掛け干し、自然乾燥の米が欲しいという問い合わせがありますが、昔の様な人の手での米作りはもう不可能でしょう。

 我が家ではやがて稲刈りが始まります。コンバインが田んぼに入ると瞬く間に刈り取って籾になります。籾の水分は25パーセント。直ぐに乾燥機で乾燥させないと蒸れて腐ります。仕上げ水分は15%。灯油を燃やし、その温風で乾燥させなければなりません。燃料高騰、CO2削減の時代、なるべく田んぼで乾かして刈り取りたいところです。今年も皆様に喜んで頂けるよう最後の仕上げに頑張ります。

 現代は農家になり手のいない時代。AIやドローン、無人トラクター、無人コンバインを使って人手をかけずに食料生産が出来る大規模農場を作ろうと国や大企業は目論んでいるようです。農業者は種を蒔き、水が欲しいだろう、肥料が欲しいだろうと予測して与えます。作物は満足であれば順調に育ち、不満があれば農業者の想定した生育をしません。農業者は予測をしながら作物が出す信号を読み取らなければなりません。農業は作物と人間のやり取りの仕事です。その営みを天候という究極の不確かな環境の中で積み上げていってやっと作物は育ちます。今を生きている経験豊富な農業者は肥料、燃料や他の物価が上がる中、農産物は価格据え置きで息子には自分たちの苦労はさせられないと廃業。そんな中でのAI、データ農業、無人運転。高価な機材を揃えて企業的経営。消費者にとって相当高価な食べ物になりますが飢えの苦しみよりマシでしょうか。
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