農園だよりDiary

2023年12

2023.12.06
 皆さん今日は。

 暑かった夏から、一足飛びで冬になりました。体の順応が追い付かなくて寒さが余計に堪えますね。皆様、如何お過ごしですか。私は地域の区長をしていますので、米の収穫が済むと研修会、勉強会、シンポジューム、色んな行事が計画され案内の通知が届き、毎日忙しい日を送っています。特に今年は「4年ぶり」の言葉通り、コロナから解放されてのイベント復活で、久しぶりに会う人、沢山の人達と会ってお話を出来るのが嬉しいですね。

 田んぼの方は急ぐ仕事はないのですが昨日、「籾摺り」の後に残った「籾殻」の片付けをしました。コンバインで収穫した籾は大切に扱いますが、もみ殻は中身がないので暇な時にでも片づけようと思って、今になってしまいました。軽トラックで田んぼに運び、広げて土に入れると、土の中の微生物の餌になります。しかし子供の頃、田舎の我が家にはガスも石油ストーブも無く、阿蘇の寒い冬の暖房は堀炬燵でした。燃料は籾殻を蒸し焼きにした「燻炭」。父は毎日朝から納屋の前で、煙突を中心に直径2mほどの籾殻の小山を作り、火を付けて焼いていました。焼け具合に斑が出来るので時々スコップで混ぜ、夕方には白かった籾殻が真っ黒の炭になります。そのままにしておくと燃え尽きて灰になるので、薄く広げて水を掛け、火が完全に消えたら完成。貴重な燃料だった事でしょう。それが当り前の暮らしだったのがテレビ、プロパンガス、石油ストーブ、電化製品の波が押し寄せ、田舎でも便利な生活が送れるようになりました。

 ところが先日、テレビ番組「NHKスペシャル」で日本の米生産現場の現状が放送されました。この農園だよりでいつもお伝えしている通り、田舎暮らしが便利になったのに農業者は毎年減少し、平均年齢68.5歳。しかし70歳代になるとリタイヤする人が多くなり、唯一国内自給が出来る米も作り手不足で近い将来日本人の食料を賄う事が難しくなるのだそうです。第2次世界大戦後、アメリカの生産過剰小麦の処理の為、国策により小麦消費が推奨され、学校給食でのパン食推進や「ご飯を食べると馬鹿になる」キャンペーン、ご飯を炊くのは面倒などの理由で多くの国民は米よりパンを食べるようになりコメ離れが進みました。昭和38年、1人年間120㎏食べていたのが令和2年、50kgになりました。もう日本人に米はいらないのでしょうか。毎日テレビ画面に流れるウクライナ、ガザの惨状。食べ物がない。パン屋がなくなった。そんな映像が流れる反面、チャンネルを変えるとグルメの番組。日本人は自分がどのようにして生きているかの根源を見失った民族のようです。国会では今、有事に備えて「食料安全保障」について法整備の準備が行われています。国民の必要栄養摂取量を賄えない状況になった場合、農家に対して食料増産を命令するのだそうですが、命令が発令されても誰が生産をするのでしょうか。食べ物がまだ潤沢でなかった時代、「食糧管理制度」があり、米は国の管理の下にありました。しかし経済発展に伴い海外から安い食料が輸入できるようになると米は国の管理下から市場原理により価格が決められるようになりました。消費量は毎年下降し、それに伴い価格も下がり、農家経営は成り立たなくなり農業は息子にはさせたくない職業になりました。 弊社のお客様には日頃から農家の暮らしの様をお伝えしてご理解を頂いています事、感謝申し上げます。しかし、もし食糧増産命令が発令された場合、国の管理下になり、これまで私達の為に意欲を持って生産できる価格で買い支えて頂いた皆様に今まで通りお届けが出来るのか、疑問は尽きません。茶碗1杯のご飯、30円。高いのか安いのか。農家の身の回りには沢山の食べ物が有ります。便利ではありませんが籾殻を焼けば自給の暖房燃料もあります。食料問題は農家経済の問題ではありません。食料生産が出来ない人たちの死活問題です。弊社では米不足の事態になっても皆様にお届けする分は出来るだけ確保したいと考えていますが、皆様も食料問題について関心を持っていただくと幸いです。
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