農園だよりDiary

2024年2

2024.02.07
 皆さん今日は。

 冬本番になりまして南国九州の阿蘇でも1月中旬積雪がありました。私が子供の頃には積雪40cmで学校が休校だった事が何度かありましたが、最近ではあまり積もらなくなりました。当地では雪に慣れていないせいか先月の雪では「ゆうパック」の集荷が混乱して荷物の発送が滞り、一部の皆様にご迷惑をお掛けしました。

 雪の数日後、阿蘇市運動公園通りを車で走っていたら道端に何かあります。停車したら小さな雪だるまでした。誰か子供連れで公園に来て芝生の上に溜まっていた雪で作ったのでしょうか。久しぶりの雪だるまに気分ほっこりでした。阿蘇では珍しい雪に気分ほっこりなどと言っていますが、能登半島地震に見舞われた方々には厳しい冬の寒さに心身ともに苛まれる日々をお過ごしの事とお見舞い申し上げます。

 連日テレビに映し出される映像に言葉もない日々を送っています。熊本地震は4月に起きました。気候もまずまずだったので生存に対する危機感はありませんでしたが能登は厳冬期、まずは安全な生活が最優先です。インフラ、住宅、課題は沢山ある事でしょう。優先順位は低いと思いますがテレビ映像に「白米千枚田」の亀裂の走った田んぼ、農道の無残な姿が映し出されました。「九百九十九枚の田植えをしたけど、あと1枚足りない。よく見たら蓑の下にあった」とうたわれる先人が長い年月をかけて苦労して作り、今に伝わる棚田です。能登半島地域は「能登の里山里海」として2011年、国際機関FAOにより「世界農業遺産」に日本で初めて認定された地域ですが白米千枚田はその主要スポットといってもいいエリアです。農業は人と自然との協調の仕事です。里山から流れ出る小川からの水を水田に引き入れ米が栽培されます。里山の落ち葉は肥料になり、薪、木炭になり、キノコが育ち、そこに生きる生物の住かになり、生物多様性が生まれます。トンボや、カマキリ、クモなどの肉食昆虫も増えて稲の害虫の大発生が抑えられ農薬を使わないで作物が栽培できます。本州最後の「トキ」の生息地と言われる所以です。そのシステムを構築する為に、地域に亘る水路やため池が設けられ、それらを維持する過程で協調的農村文化が育まれたのでしょう。能登地方の伝統的農業、農村景観、自然共生社会、伝統的な農耕祭事また、里海の「素潜り漁」朝ドラでも紹介された「上げ浜式製塩」、「輪島塗」に代表される伝統工芸などが認められての世界農業遺産認定です。これまで欧米では沢山の農薬、肥料を使っての大規模農業が推奨されてきました。しかしアメリカでは年間販売額が1万ドル(140万円)以下の農家が全米農地の3割を耕しているのですが、こうした小規模農家がアメリカやヨーロッパで見直されています。能登地域は自然循環、生物多様性、自然との調和といった今世界の研究者が追及している課題に対する答えを実践している地域として世界の注目を浴びている地域なのです。

 阿蘇地方も2013年に世界農業遺産に認定されました。阿蘇でも先人の千年とも言われる営みの中で育まれた阿蘇の原野とそこに育つ野草を利用して、やせ地を克服し今に繋がる農業が認められたのですが、今後も継続して後の世代に繫でいくのは大変な事です。今回の地震は千年単位とも言われる、地形をも歪める大きな力が働いたそうですが被災地では田んぼがどうなったのか、水路が、ため池が、農道がどうなったのか、まだその段階ではないでしょう。今の世の中、農業を維持していくだけでも大変な時代です。それなのに大変な災害が起きて農業機械や倉庫も被害に遭われていることでしょう。復興には永い年月が必要だと思いますが先人が何百年、千年を掛けて残してくれた人と自然の共生の遺産。「世界の宝」です。世界中の人が能登の農業を知っています。

 まずは身の安全、生活再建と幾つもの段階がありますが、是非能登の農業を産業を再生していただきますよう熱く応援しています。
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