農園だよりDiary

2024年3

2024.03.06
 皆さん今日は。

 日に日に日脚が伸びて我が家の梅もサンシュウも満開になりました。先月号でもお伝えしましたが、私の子供の頃には九州の阿蘇で登校が危険な為に休校になるくらいの積雪がしばしばありました。近年は10cm程の積雪はありますが昔のようには積もらなくなりました。今年は雨が多くて、梅雨時期のように降る事もあり田んぼは濡れたままです。そんな中でも春の作業は進めて行かなければなりません。昨年秋からの田んぼの周りに伸びた雑草はカラカラに冬枯れしています。数日天気が良いと乾いた風で乾燥しますので見計らって火を付けると折からの西風に煽られ綺麗に焼けてスッキリします。これでリセット。新たな米つくりが始まります。

 冬枯れで何もないあぜ道ですがノビル、スイバ等子供の頃に摘んでいた草が、枯れ草色の中に薄緑色を輝かせて存在を誇示しています。ノビルはヒトモジよりもっと小さいネギ科の野草です。地中に1cm程の球根があり、球根ごと掘って我が家ではグルグルに巻いて茹でて酢味噌で食べました。スイバは阿蘇ではギシンといいます。ギシギシという所もありますが、田んぼのあぜ道、田んぼとの境、岸に生えるからそう呼ばれたのでしょう。葉や、もうしばらくすると伸びる茎を学校の帰りや外で遊びながら摘んで食べました。文字通り「道草」です。現代人は衛生を考えますので洗って食べますが昔人は何でも「そのまま」。お腹を壊すことなどありませんでした。酸っぱいのでちょっと塩を付けるともっとおいしくなります。ポケットの中に少しの塩の紙包みを忍ばせるのも先輩たちからの知恵です。もう少し暖かくなると土手のミノガヤが育ち茎の中に真っ白で柔らかな穂の赤ちゃんが出来ます。ツバナです。取り出して口に入れると草の香りとほのかな甘み。この時期限定、最高のおやつです。

 春に芽吹く新しい芽は、永い冬を乗り切り少しでも多くの太陽光を受け取ることが出来る大きな葉を広げられるよう秋に沢山の栄養を蓄え、そのエネルギーを使って伸びてきます。樹木も次の世代の繁栄の為に前年秋から沢山の花粉を準備して春に備えます。この季節、花粉症に悩む人が多いそうですね。私は30代の頃アレルギーに苦しみました。息苦しくなりゼイゼイヒューヒュー。病院で診てもらうと気管支ぜんそくとの事。飲み薬と吸引剤を頂き対処療法。農作業で体を動かすと酸素不足で目がくらみそうになる事もしばしば。アレルゲン検査をしても何が原因か分からず、死ぬまで仲良く付き合うしかないと観念しました。取あえずマスク着用。付き合っていくと季節や仕事、自分の行動など、発作が起きる原因が見えてきて、トマトの季節と稲刈りの季節が要注意だと分かりました。我が家の一番の生活基盤が原因だったのです。作物を育てるのは子育てと一緒。病気になったら薬を与え、栄養剤を与えます。皆さんは農薬のかかった野菜を食べると体に影響があることを考えますが農家は農薬散布のとき吸い込み、体にも付着します。農薬が乾くと飛散して皮膚から呼吸から体に入ります。そんな農薬、花粉、カビ等、いろんな相乗作用が原因だったのでしょう。それから米つくりは有機栽培、トマトつくりは天敵昆虫による害虫駆除と病気の少ない品種に変更して何となく症状が軽くなり、今では全く健康体になりました。

 今、私たちの暮らしは豊かになり身の回りには溢れるほどの品物があります。昔は素材が自然界に由来する物だったのが今は石油に由来する物になりました。石油から多くの化学物質を抽出し、いろんな組み合わせで世の中が満たされています。そういった物質の関与で私たちの体は変化しているのかもしれません。清潔な水、衛生管理された食べ物。完璧に近い環境なのに花粉症という病気が蔓延して国民病といわれるのは皮肉なことです。子供の頃食べた道の草は風が吹けば埃をかぶり衛生的ではなかったけれど花粉症など聞いたこともありませんでした。自然回帰。昔人の生活の有り様が花粉症治療の解決法かもしれませんね。
PAGE TOP