皆さん今日は。
田植えの季節になりました。連休に家族を招集して田植えを計画している農家は籾種まきの段階から日にちを逆算して段取りが行われます。田んぼの用水開始に合わせて水が入れられ、準備万端で連休を迎えます。5月の3日4日あたりには稲の苗を積んだ軽トラや手伝いの家族の乗用車、おまけに観光の車やバイクで農道は急に賑やかになります。それでも最近は米作りを大規模農家に委託する農家が増え、以前ほどの賑わいはありません。
我が家では最近の夏の猛暑の影響を極力避けるために少し遅い5月12日当たりの田植えを計画しています。先月の会報でお知らせしましたが4月9日に籾種の「塩水選」「温湯消毒」を行い、そのまま水につけて吸水させ、発芽を促しました。そして4月21日種まき、すぐにビニールハウス内に並べ、太陽光を適度に通す「アルミ蒸着フィルム」を掛け1週間。苗は6cm程に伸びました。アルミフィルムをはずし、苗箱が浸るまで水を溜め、引いた分だけ補っていくと苗は自分の力で成長していきます。田んぼ5ha分、850枚の苗です。苗の生長を見ながら田んぼでは水を溜め、水が漏らないよう、苗がすぐに根を張れるよう、また雑草に競り負けないよう丁寧に「代搔き」作業を行います。種まきして20日、苗の根っこにはまだ籾が付いています。指でつぶすと白いデンプンが出てきます。今まで苗箱の中で団体生活をしていたのが急に外界に出され、1株3本にされるのです。昔の苗作りはひと月かけて田んぼの土の上で密度を薄くして苗を育てました。日光を浴び、葉や葉鞘に養分が蓄えられ雨風にさらされて生命力の備わった苗になりました。しかし今の苗作りは20日間。苗箱の中で密度を厚く種をまき、ハウスの中で大切に育てられます。田植えされた後、体力が落ちて植え痛みしないよう、直ぐに根を張るよう自然の摂理が用意した弁当です。
田植えから150日でお米が出来ます。「令和のコメ騒動」から「備蓄米放出」「米価高騰」。お米の話題には事欠かない昨今ですがコメ不足は解消されるのでしょうか。生産現場からの視点では、農家が製品として出荷するコメは1.85㎜の網目のフルイに残ったものですが、国の生産統計では1.75mmの網目を使います。当然統計上の生産量は高くなります。また、昨年秋のコメ不足から一転、収穫が始まると同時に出荷作業が間に合わないほどの大量の注文。一年を掛けて消費する量のある部分を先食いしたのでしょう。また、人間の心理として無い物は手に入れたいもの。いつもはそんなに食べないけれど米不足になって今度買うときに品物がないと大変だから多めに買いましょう。そんな人も大勢いたことでしょう。しかし農家は、米不足だろうと関係ありません。良いコメが出来るよう、ただ日々稲と向き合うのみです。
4月12日から16日まで、台湾の農村巡りの旅行に行きました。台湾の農村事情も日本同様、農家の平均年齢は60歳。安いコメより収益の高いお茶やその他の生産にシフトしているのだそうです。そんな中での日本の米不足。今年は民間業者の輸入により、相当の量が輸入されているそうですが、現地では来年からも台湾の米を日本に売る好機と捉えているようです。日本の関税をかけて取引するには相当高価な米になります。特別味が良いか有機栽培米でないと日本では売れないでしょう。日本国内での有機栽培米の流通量は0.1%しかありませんが国民的認知度はあります。ところが台湾では認知度は高くなく、取り組む農家はまだ少ないそうです。日本では数少ない有機栽培農家が高齢により廃業する中、台湾の有機農業農家が増えて日本の有機栽培米流通の一翼を担うのか、日本の有機栽培農家の一人として、そうはさせてはならないと意地を見せたいところです。
我が家では来年からの規模拡大を目差し、今期から忙しい時期の雇用を始めました。次の段階は田んぼの借入です。皆様のご要望にお応えできるような生産体制を作っていきます。