農園だよりDiary

2025年7

2025.07.09
 皆さん今日は。

 例年、7月中下旬まで毎日しとしとジメジメ続くはずの梅雨が、今年は6月末に上がりました。梅雨明け間近を知らせるキンキン蝉もまだ準備が間に合いません。高冷地で涼しいはずの阿蘇でも30度超えの日が続いている中、毎日田んぼに入り、田の草取りをしています。いつもは雨の中、合羽を着ての作業なのですが今年は灼熱の太陽に照り付けられてシャツもズボンも汗でびっしょりです。背中は汗と太陽熱で焼かれて汗疹なのか日焼けなのか分からないプツプツと真っ赤になり最悪です。人間は命にかかわることはないのですが田んぼのカエルは水温が高くなり死んでいるのも沢山見かけます。暑くて死んだカエルは初めて見ました。まさに地球沸騰時代です。この季節の阿蘇は空気が澄んで爽やかな風が吹き渡るのですが、写真のように晴れているのに空は霞んで阿蘇山は見えません。7月3日と4日には遠くで雷鳴が聞こえたと思ったらもうパラパラと大粒の雨が降り出し、急いで田んぼから上がりました。やっと農道の軽トラックまでたどり着いたらもう真上で雷鳴。一目散に帰りました。高原阿蘇の雷はまだ遠くだと思っても待ったなし。また突然近くに落ちて一発こっきり雷もあります。すぐに駆け込む車がない時代には落雷で死んだ人が沢山いました。帰り着いたら大粒の雨。雹も混ざっています。そして耳をつんざく雷鳴。光と音が同時。これは近いな。翌日田んぼに行ったら昨日草取りをした田んぼの、我が家から直線距離で200mくらいのところに落ちていました。落ちていると言っても電気なので何もなく、ただ高圧電気により写真のように直径5mほど稲が焼けて黒くなっています。昔は雷様が落ちたところは広がらないようにしめ縄を張っていましたが、雷様の本体が分かってしまった現代はただ見ているだけになりました。それでも稲はショックで草丈が低くはなりますが穂は出て広い田んぼで見ると収量的影響はないようです。

 雷は雨を降らせ、涼しい空気を運んで来てくれる自然現象ですが、最近の米騒動は頂けません。消費者の皆さんもお困りでしょうが一般の生産者は昨年秋にJAなどに売り渡してしまって米が高いと言われても対岸の出来事でしかありません。「平成のコメ騒動」以来市場原理の名のもとに下がり続けたのが、やっと30年ぶりに昨年価格が上がりましたが国はコメ相場に介入して、また低価格誘導をするそうです。先の国会では年金問題が大きく取り上げられましたが農家の年金については語られません。農家は自営業なので基本的に基礎年金です。以前「農業者年金」が創設されました。基礎年金と同様、若い人が支払い、高齢者が受給する制度だったので、若い就農者がいなくなり年金制度の維持が出来なくなることで廃止になり、新しく自己積立方式の新制度に移行しました。その移行の時に、自分の持分の8割の現金を受け取り2割放棄し、新制度に加入しなかった農家が全国で7割います。年金の大切さは分かっていても将来よりも今日だったのです。基礎年金60数万円。年老いた夫婦2人で130万円。昨年は30年ぶりの米価でしたがそれまでは労賃がない価格。息子に継がせようにも生産経費や家計費等を払うと息子に給料も払えない。後は継がせず米作りは自分の代で終わり。国民年金だけでは生活が成り立たないけれども、少しでも米収入があれば成り立つそれが実態です。国内農地の半分は中山間地と言われる傾斜のある地域です。国は農外資本を取り入れてAI、無人運転、ドローン、スマート農業を進めるそうですが国内半分の地域は取り残され荒廃し、取り組みが出来るところでは機械代、人件費等のコストは消費者が支払うことになります。また国が進める計画では手の掛かる有機農業は不可能。除草剤、化学肥料使用は必須です。

 食は命を繋ぐために無くては成らない物なのに安くて、有って当たり前。スマホ、娯楽、ファッション。やりたいことが沢山あるこの時代。時間もお金も限りがあるので何に振り向けようか悩みは皆同じです。しかし楽しい時を過ごす第一条件は空腹ではないことでしょう。
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